2009年5月11日月曜日

地に足を。その秘訣







金曜日の東京。
馬場について出かけた先で、ため息が出るほどに
美しく素晴らしい品々を拝見。
何がそんなに美しいのか。
肌。かたち。それを生み出す、惜しみのない作業。
そして、妥協のない仕事。生き方。


池袋・東武百貨店にて13日まで開催中の
お店でも扱わせて頂いている、益子の作家・若杉集さんの
展覧会にお邪魔する。
「若杉集の仕事=急須」と言われるほどに
若杉さんが作る急須は、彼の代名詞でもある。
凛としていて繊細で、どれもこれも、本当に美しい。

益子の土は荒い、もろい、扱いづらいと言われがちだが、
そんな事はまったく感じさせない。
若杉さんは、100%益子の土を使う事にこだわっている。
益子の土でも、惜しみなく手をかければ、
こんなにきめ細やかで、強く、すべるような肌の
仕上がりになるのだと、いつも驚かされる。

しかも、彼の場合、自分の手で、発掘採集する。
それを、赤ちゃんの肌のような、
いや、もっともっときめ細かい土になるまで、
自らの手で何度も何度もふるいにかけ、
砂分の少ない粘りのある純度の高い
細かな土にするため、水簸する。
妥協なく、惜しみなく手間をかけ、納得のゆく土を作る。

急須を作るために土を作るのではない。
自分で作った土を生かすには、急須が一番という事で
急須を作っている。急須作家、いや、職人。
そんなくくりはどうでも良いと本当に強く思う。
若杉さんにしか出来ない、彼の仕事。

益子のどこに、どんな土があるのか、
歴史、暮らし、風土を基とし、視点にし
自然や地層を知る若杉さん。
だから、自ずと土にも詳しい。
どちらが先で、どちらが重要、そんな事ではくくれない。
暮らしも、自分の暮らす周りの環境も、生態も、
すべてがつながってこそ、作れる急須。

「自分が作りたいものには、
益子のあそこのあの土とこっちのあの土を、
こういう風にまぜるといい。
あの土とこの土は、気性が似ているから
混ぜても、きっと喧嘩せずに仲良くなるはず」

「たまたまほんの少しだけ採れたこの土を
ほんの少しだけ使ったらきっと良くなる。
案の定、こんなにいい色がでて
とても薄くて強い物になった」

一つ一つ、特徴の違う品々を詳しく丁寧に解説して下さる。
どの説明も、おおらかな気持ちで土に向かい、
いつも可愛がっていないと分からないようなセリフばかり。
だからこそ、いろんな表情を持つ個性豊かな、
急須が作り出せる。

お忙しい中 、長い時間楽しい話をうかがえた。
その中でもとても嬉しかったお話が。
若い作家さん、作り手の人たちが
益子の土にこだわるようになってきたという事。
自分で土を掘りに出かける若者が増えてきたと
嬉しそうに話す若杉さんの言葉の向こうに
益子で生きる、明るく頼りになる若い力が
育つ事を感じた。

ここにこだわり、ここで暮らす。ここに生きる。
近くに目を向け、地に足をつけ、踏みしめる。

土にこだわり、益子にこだわる若杉さんの話の先に
「強く、楽しく生きる」その秘訣が、光がみえた気がした。

若杉さん、貴重なお話を有難うございました。
あの急須でお茶をいただけること、
とても嬉しく、とても、楽しみです。


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